「まぁ、プロによって様々ですが、私がクラブを扱っているという視点からすると、
クラブのつまみ食いをはじめるというのが、最も不調への流れを察知できる部分ですかね」
クラブのつまみ食い・・・?
果たして何のことでしょうか?
「まぁ、簡単にいえば目的もはっきりしていないのに、いろいろなクラブに手を出してしまうことですね。
もっとも自分にマッチしたクラブを探していくことは、プロゴルファーとしては大切なことですが、
好調なときほど、さらなる上を目指す意識の強さからか、クラブに対して貪欲になる結果、
“何か、今のままでは物足りない”
と思ってしまうプロが非常に多いんですよ。
このプロの変調を見逃してしまうと、結局、今まで造ってきたスイングやクラブセッティングもバラバラになってしまい、
自分にとってベストなものを探し求めていたにもかかわらず、全ての基準がなくなってしまって、
どこにゴールを求めていたのか分からなくなってしまう。
つまり、真夜中の迷路というか、長いトンネルへ迷い込んでしまうことになるんです」

では、そのような変調を見つけた場合、田中クラフトマンは、プロに対してどのような対応を取っているんでしょうか。
「プロは、自分にとってベストなものを求めているわけですから、
プロはそのことが悪いという意識はどこにもないんです。
ですから、頭ごなしに“何やってんの!”と話をすすめてしまうと、
衝突することもあるし、意見が噛み合わなくなって信頼関係が崩れるようなこともあります。
私も多くのプロとずいぶんと衝突してきましたから・・。
ですが、そのクラブのつまみ食いが、そのプロにとって、何を求めているものかを一緒に考え、その都度、それが正しい選択であるのか、間違った選択であるのかを話し合うようにしているんです。
クラフトマンというと、ただクラブの調整やニューモデルをプロへ販促しているだけと思っている人も多いと思いますが、
プロとともにプロと同じ立場、同じ目線に立った対応をして、共に試合で戦っていくことこそ私たちの本当の仕事であり、その対応をできてこそクラフトマンといえると思うんです。
プロのクラブに対する好みも把握しなければいけませんし、新しいモデルを渡していくにも、プロが何かを求めているシグナルを察知する洞察力を持ってこそ、新しいモデルを渡すタイミングが分かってくるんですよ。
試合1戦ごとももちろん戦いですが、プロ1人1人の変調を見逃さないようにする毎日が戦いなんです」
と語ってくれた田中博文クラフトマン。

苦労があるからこそ、そのトンネルを抜けたときに見える明かりは一層まぶしく感じるもの。
プロにとってのベストなものを常に追求し、
プロともに共闘しているからこそ、優勝したときには、格別の喜びがあると締めくくってくれた田中クラフトマン。
これからも何気なく過ごす1日は決してないはず。
毎日がプロと共に分かち合える“優勝”という栄冠へ向けての戦いなんですね。 |